顔料の種類と選び方

土地の色に出会う、顔料選び。

土の赤、鉱物の黄、産地によって少しずつ異なる色合い。天然無機顔料を選ぶ楽しさは、色だけでなく、その色が生まれた土地や原料にも目を向けられることです。絵具にして紙に伸ばすと、粉の状態とはまた違う表情に出会えます。

DOLCIの顔料には、土地の名前がついたものがいくつかあり、その土地の文化や歴史とも結びついています。色の名前をきっかけに、その土地の風景や人々の営みに思いを巡らせる。色そのものだけでなく、その背景にある物語にも触れられることが、天然無機顔料の魅力のひとつです。

たとえば、イタリアのシエナの土から生まれるナチュラルシエナと、その土を焼成してつくるバーントシエナ。黄褐色や赤褐色の表情は、シエナの街並みの色にも重なります。顔料の色を通して、その土地の風景を思い浮かべることができます。

かつてシエナには、地元の土を採取し、精製する工場がありました。DOLCI社は今も、シエナの土から顔料をつくっています。この土地と顔料の物語は、別の記事で詳しくご紹介したいと考えています。

顔料には、土や鉱物などからつくられるものもあれば、化学的な工程によってつくられるものもあります。「天然無機顔料」「合成顔料」「レーキ顔料」は、同じ基準で分けた名前ではなく、分類が重なる場合もあります。それぞれの違いを知りながら、天然無機顔料ならではの魅力にも触れてみましょう。

顔料の歴史、人と色の長い付き合い

人は古くから、身近にある土や鉱物などを使って色を描いてきました。先史時代の洞窟壁画にも、オーカーなどの土に由来する顔料が使われています。天然無機顔料は、人の表現を長く支えてきた素材です。

今日、土や鉱物の顔料を使うことは、その長い色の営みに自分の手で触れることでもあります。原料の成り立ちを思い浮かべながら色を練る時間も、天然無機顔料を使う楽しみのひとつです。

一方、人工的に顔料をつくる技術にも長い歴史があります。古代エジプトでは、合成顔料として知られるエジプシャンブルーがつくられていました。「天然は古く、合成は新しい」と、単純に分けられるわけではありません。

レーキ顔料にも長い歴史があります。植物や昆虫などから得られる天然由来の染料を、不溶化するなどして顔料として使う技術は、近代以前から絵画などに用いられてきました。茜などに由来する赤いレーキは、その一例です。

近代になると、化学の発展によって新しい合成顔料が次々と生まれ、合成染料の発展とともにレーキ顔料に使われる原料や色の選択肢も広がりました。ここで紹介しているのは顔料や技術全般の歴史であり、現在のDOLCIの各製品が同じ時代からつくられているという意味ではありません。

今、私たちが手にする顔料には、土地が育んだ原料の色と、人が工夫を重ねて生み出した色が共にあります。その成り立ちを知ることも、色を選ぶ楽しみのひとつです。

天然無機顔料とは

天然無機顔料は、土や鉱物など、自然にある無機質の原料からつくられる顔料です。原料を砕いたり、洗ったり、粒子を選り分けたりする工程を経て、顔料として使われます。

産地や原料による色の違い、粒子が生む質感なども、天然無機顔料の魅力です。同じ色の名前でも、原料によって色合いや塗ったときの表情は異なります。

たとえば、オーカーのような土に由来する顔料は、黄や赤、褐色のわずかな違いを見比べるだけでも楽しめます。一色ずつ薄く伸ばし、重ね、隣に並べてみる。名前だけでは分からない色の個性を見つけることで、作品に使いたい色が見えてきます。

合成顔料とは

合成顔料は、化学的な工程によってつくられる顔料です。無機顔料と有機顔料があり、色や性質はさまざまです。

狙った色や品質を安定してつくりやすいという特徴がありますが、合成顔料がすべて鮮やか、すべて不透明というわけではありません。発色や透明性、耐光性などは、一つひとつの顔料によって異なります。

レーキ顔料は、別の分け方

レーキ顔料は、染料を不溶化するなどの方法で、顔料として使えるようにしたものです。天然由来の染料を使うものも、合成染料を使うものもあります。

つまり、「レーキ顔料だから天然」「レーキ顔料だから合成」とは一括りにできません。使われている原料や、それぞれの製品の情報を確認することが大切です。

単一顔料と混合顔料の違い

一つの顔料の色を生かすものと、複数の顔料を混ぜ合わせて色を調整するものとの違いもあります。これは、天然か合成かという区分とは別の話です。合成顔料にも単一の顔料として使われるものがあり、「合成顔料=複数の色を混ぜたもの」ではありません。

混合することで目指す色をつくる方法にも、一つの顔料の色をそのまま生かす方法にも、それぞれの目的があります。自分で混色を楽しみたいときには、どのような顔料が使われているかを知っておくと、色づくりの手がかりになります。

DOLCIの天然無機顔料、そのままの色

DOLCIの天然無機顔料は、一つの色につき、一つの鉱脈から採取されています。異なる色を混ぜる色調整は行なっていません。

色を混ぜて整えるのではなく、その場所の原料が持つ色を届ける。その色を自分の手で練り、塗り、必要なら混ぜ合わせる。素材の色から自分の表現へとつなげられることが、DOLCIの天然無機顔料を選ぶ楽しさです。

まずは混ぜずに一色ずつ試してみてください。濃く置いた部分、薄く伸ばした部分、乾いたあとの表情。その違いを確かめてから混色を始めると、それぞれの色の個性を手がかりに、自分らしい色を探せます。

なお、異なる色を混ぜていないことは、化学的に一つの成分だけでできているという意味ではありません。天然の土や鉱物には、さまざまな成分が含まれています。

天然か合成かだけでなく、用途に合わせて選ぶ

顔料を選ぶときは、色合いに加えて、透明性や隠ぺい力、粒子の質感、耐光性、合わせるバインダーとの相性などにも目を向けてみてください。これらの性質は、天然か合成かだけでは決まりません。

また、天然だから安全、合成だから危険というわけではありません。取り扱い上の注意や用途への適性は、各商品の説明や安全に関する情報をご確認ください。

はじめの一色に、土地の色を。

色の背景や素材の表情も楽しみたい方は、気になる天然無機顔料を一色、少量から試してみませんか。色見本をつくり、原料や配合を書き留めるうちに、自分だけの色の記録が育っていきます。

見慣れた黄や赤にも、まだ知らなかった違いがある。その小さな発見から、次の作品の色を探してみてください。

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